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地方の実家相続

田舎の実家が売れないときの選択肢|空き家バンク・買取・国庫帰属

2026年10月14日

「半年売りに出しているが、問い合わせが1件も来ない」
「不動産会社に『うちでは扱えない』と言われてしまった」

田舎の実家を相続された方から、こうしたご相談をいただきます。売ると決めて動き出したのに、そこで止まってしまう。先に進めない場面です。

先に正直に申し上げます。地方には、今の条件では売れない不動産があります。 価格を下げれば必ず売れる、というものでもありません。それでも、手放す道は一つではありません。

この記事では、まず売れない理由を切り分けるところから始め、価格の見直し、空き家バンク、買取、寄付、そして相続土地国庫帰属制度まで、順番に試す形で整理します。

細井誠

✍️ この記事を書いた人

FPマイスターホーム代表 細井 誠(宅地建物取引士・AFP)

相模原に暮らして40年以上、町田で不動産の仕事をして20年以上。これまで1,000件以上のご相談をお受けしてきました。「買える家」ではなく、「無理なく、幸せに暮らせる家」をご提案します。趣味はトライアスロン。お客様が納得されるまで、最後までお付き合いします。プロフィール

目次

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この記事でわかること

結論:田舎の実家が売れないときは、値段・物件・売り方のどれかを切り分ける

値下げの前に原因を分けると、回り道が減ります。

売れない理由の切り分け

原因 症状 打つ手
値段 問い合わせは来るが、内見後に決まらない 価格の見直し
物件 問い合わせ自体がほとんど来ない 条件の整理、買取・空き家バンクへ
売り方 掲載が少ない、掲載の内容が薄い、報告が来ない 媒介契約の見直し、会社の変更

物件そのものが理由のとき|再建築不可・境界・市街化調整区域

「問い合わせが1件も来ない」場合、物件の条件そのものが理由になっていることがあります。田舎の実家でよく当たるのは次のような条件です。

  • 接道がない/再建築不可 — 建て替えができないため、買い手が限られます
  • 境界が確定していない — 境界標や確定測量図がないと、買主が判断できません
  • 市街化調整区域 — 原則として新しく建物を建てられない区域です
  • 私道・越境 — 通行や配管で隣地の承諾が要ることがあります
  • 残置物が残っている — 片付けが買主の負担になります

このうち、ご自身で確かめられるのは境界の資料と残置物です。接道や区域は、物件資料と市区町村の窓口で確かめられます。

問い合わせの数が、いちばんの手がかりです

  • 問い合わせが来て、内見もあるのに決まらない → 価格か、物件の状態(残置物・傷み)
  • 問い合わせがほとんど来ない → 価格が相場から大きく離れているか、そもそも需要が薄い
  • そもそも広告が出ていない → 売り方の問題。会社に確認してください

💡 FP細井のワンポイント本音アドバイス

まず不動産会社に「この3か月で、問い合わせが何件、内見が何件ありましたか」と聞いてください。専任媒介契約なら、定期的な報告義務があります。数字が出てくるかどうかを、まず確かめてください。

空き家が売れないときの価格の見直し|相場とのずれを確かめる

まず確かめたいのは、価格です。ただし、やみくもに下げるのではありません。

相場を自分で確かめる

  • 同じ地域の売り出し中の物件を、不動産ポータルサイトで見る
  • 市区町村が公表している地価の情報を見る
  • 不動産会社に、近隣の成約事例を出してもらう

「売り出し価格」と「成約価格」は違います

ポータルサイトに出ているのは売り出し価格です。実際にいくらで決まったかは、不動産会社に聞いてください。

小刻みな値下げは、かえって長引きます

10万円ずつ下げていくと、買主に「もっと待てば下がる」と思われます。下げるなら、根拠を持って一度にまとまった幅で。そのほうが反応を確かめやすくなります。

💡 FP細井のワンポイント本音アドバイス

価格を決める前に、「いくらで売れなければ、別の道を考えるか」という下限を先に決めてください。これがないと、際限なく下げ続けることになります。

空き家バンク|自治体の仕組みと、使えるケース

地方の物件で、一般の流通に乗りにくいときの選択肢です。

どういう仕組みか

国土交通省によれば、自治体ごとに分かれていた空き家情報を横断して検索できるようにしたのが全国版空き家・空き地バンクです。2017年10月31日に試行運用が始まり、2018年4月に本格運用へ移行しました。運営は公募で選ばれた民間2社が担っており、国は構築費用の一部を補助しています。

自治体が参加を申し込み、物件情報を登録する形です。利用者は全国版への登録は不要ですが、物件によっては自治体への問い合わせが必要になります。

使えるケース

  • 一般の不動産流通では買い手が見つからない物件
  • 移住を考えている方に向く立地
  • 自治体が移住促進に力を入れている地域

確かめること

空き家バンクを使う前に確かめること

確かめること なぜ
その自治体が参加しているか 参加していない自治体もあります
登録の条件 物件の状態や所有者の要件が定められていることがあります
利用者の制限 移住促進の目的から、県外・市外の方に限る場合があります
仲介が入るか 自治体が仲介するわけではありません。契約は当事者間か、提携する宅建業者を通します

登録すれば売れる、というものではありません

空き家バンクは、情報を載せる場所です。掲載しても問い合わせが来ないことはあります。 掲載と並行して、ほかの道も検討してください。

💡 FP細井のワンポイント本音アドバイス

まず、実家のある市区町村の空き家バンクがあるかを調べてください。自治体のウェブサイトか、全国版のサイトで分かります。登録が無料の自治体も多いので、試す価値はあります。

空き家の買取|仲介との違いと、価格が下がる理由

早く手放したいときの選択肢です。

仲介と買取の違い

仲介と買取

仲介 買取
買主 一般の個人・法人 不動産会社
期間 買主が見つかるまで 比較的早い
価格 市場価格に近い 市場価格より低くなる
仲介手数料 かかる かからないことが多い
契約不適合責任 売主が負う 免責となることが多い

なぜ価格が下がるのか

買い取った会社は、修繕して再販売するか、解体して土地として売ります。その費用と利益が差し引かれるためです。安く買われるのではなく、その後の手間と費用が乗っていると考えてください。

地方では、買取自体を断られることがあります

再販売の見込みが立たない地域では、買取の対象にならないことがあります。これは正直にお伝えしておきます。

💡 FP細井のワンポイント本音アドバイス

町田・相模原のような需要のある地域での買取と仲介の比べ方は買取vs仲介どっちがいい?にまとめています。地方の場合は前提が違いますので、まず「買い取ってもらえるか」から確かめることになります。

実家の寄付・引き取り|譲渡できる場合と、できない場合

「タダでもいいから手放したい」という段階の選択肢です。

自治体への寄付

多くの場合、自治体は受け取りません。 自治体が土地建物を受け取ると、固定資産税が入らなくなり、管理の負担も生じるためです。行政が利用する具体的な計画がある場合に限られます。

隣地の所有者へ譲る

条件が合えば、こちらのほうが成立します。隣の土地の方にとっては、土地が広がる、接道がよくなる、といった利点があります。

譲る側にも費用と税がかかります

「タダであげる」でも、費用はかかります

  • 所有権移転登記の費用
  • 測量・境界確定が必要な場合はその費用
  • 贈与を受けた側に贈与税がかかる場合があります
  • 法人へ無償で譲渡した場合、譲渡した側に課税される場合があります

税の扱いは個別の事情で変わります。必ず税務署か税理士にご確認ください。

💡 FP細井のワンポイント本音アドバイス

0円で出しても、引き取り手がつかないことがあります。これは、もらった側に管理費と固定資産税が発生するからです。不動産は、持っているだけで費用がかかる資産です。そこを理解すると、次の手が見えてきます。

売れない土地の最後の選択肢|相続土地国庫帰属制度

売れない、譲れない、というときの最後の道です。

相続した土地を国に引き取ってもらう制度で、法務省によれば令和5年(2023年)4月27日に始まりました。制度開始前に相続した土地も対象になります。

ただし、条件は厳しめです

建物があると、申請そのものができません

却下事由の1番目が「建物がある土地」です。建物が建っていると申請できないため、実家の相続では対象外になることがあります。解体してから申請することはできますが、解体費用がかかります。

ほかにも、担保権が設定されている土地、境界が明らかでない土地なども申請できません。

費用

  • 審査手数料:土地1筆あたり14,000円(取下げ・却下・不承認でも返還されない)
  • 負担金:20万円が基本(市街化区域などの宅地・農地と森林は面積に応じて増える)

要件と費用の詳しい内容は相続土地国庫帰属制度とはにまとめていますので、検討される方はそちらをご覧ください。

💡 FP細井のワンポイント本音アドバイス

この制度は「お金をもらって引き取ってもらう」ものではなく、お金を払って手放すものです。売れるなら売ったほうが手元に残ります。順番としては最後です。

FPの視点|空き家を持ち続ける費用と、手放す費用を並べる

判断に迷ったら、金額で並べてください。

持ち続ける場合(毎年)

  • 固定資産税・都市計画税
  • 火災保険
  • 管理の費用(自分で行くなら交通費、頼むならその費用)
  • 電気・水道の基本料金

手放すための費用(1回)

手放し方ごとの費用の性格

手放し方 手元に入るお金 出ていくお金
仲介で売る 売却価格 仲介手数料・印紙税・登記費用・残置物処分・(場合により)測量
買取 売却価格(市場より低い) 登記費用・残置物処分
空き家バンク経由で売る 売却価格 仲介が入る場合は手数料・登記費用
隣地へ譲る なし(または少額) 登記費用・測量・場合により税
国庫帰属 なし 審査手数料14,000円+負担金20万円〜+解体費用

「何年分で元が取れるか」で考える

たとえば負担金20万円を払って手放す場合。年間の維持費が3万円なら、約7年分です。この先10年、20年持ち続けるつもりがないなら、手放す側に傾きます。

解体が必要なら、その費用も足してください。解体費用は建物の規模・構造・立地で大きく変わるため、ここでは金額を書きません。必ず複数社から見積もりを取ってください。

「今は動かない」も選択肢です

私は、すぐに売る・買うをお勧めしません。管理の負担が重くないなら、数年待つ判断もあります。地域の事情が変わることもあります。

ただし、相続した家を売る場合に使える税の特例には期限があります。相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、という要件です。売る可能性があるなら、ここは先に確かめてください。詳しくは相続した実家を売ったときの税金をご覧ください。

💡 FP細井のワンポイント本音アドバイス

待つあいだも管理は続きます。遠方であればなおさらです。費用と手間の見積もりは遠方の空き家の管理と費用にまとめています。

向かない人・よくある失敗|空き家が売れないときどうするか

この記事の範囲を超える方

こういう場合は、先に別の記事・専門家へ

よくある失敗

  1. 原因を切り分けずに値下げを続けた → 問い合わせの数を先に確かめてください
  2. 1社に任せきりで、報告を求めなかった → 専任媒介なら報告義務があります
  3. 空き家バンクに登録して、それで終わりにした → 掲載は情報を載せる場所にすぎません
  4. 解体してから売ろうとした → 建物を壊すと住宅用地の特例が外れ、翌年から土地の税負担が上がる場合があります
  5. 「タダなら誰か引き取る」と思っていた → もらう側にも費用と税がかかります

急がなくて大丈夫です

焦って決める必要はありません。納得いくまで、何度でもお付き合いします。売れない状態は、気力を削ります。でも、順番に試していけば、打つ手はまだあります。

次に確かめること

まず、今の不動産会社に「この3か月で問い合わせ何件、内見何件か」を聞いてください。この数字で、値段の問題か、物件の問題か、売り方の問題かが分かれます。

そのうえで、実家のある市区町村に空き家バンクがあるかを調べてください。自治体のウェブサイトで分かります。

💡 FP細井のワンポイント本音アドバイス

実家の近くの不動産会社に問い合わせても、別の窓口を案内されて話が進まない、というご相談は近年少しずつ増えています。窓口が1つにまとまっているか、連絡がこまめに来るかを確かめてください。

よくある質問

Q. いくらまで価格を下げるべきですか?

A. 一律の答えはありません。ただし、下げる前に「いくらで売れなければ別の道を考えるか」という下限を先に決めてください。下限がないまま下げ続けると、際限がなくなります。また、小刻みな値下げは買主に「もっと待てば下がる」と思わせ、かえって長引きます。下げるなら、根拠を持って一度にまとまった幅で下げることになります。近隣の成約事例を不動産会社に出してもらい、そこからの乖離で判断してください。

Q. 0円でも引き取ってもらえないのはなぜですか?

A. 不動産は、持っているだけで固定資産税と管理の費用がかかるからです。もらう側から見ると、タダでもらっても毎年の負担が増えます。建物があれば解体費用の心配もあります。このため、0円でも引き取り手がつかないことがあります。現実的に成立しやすいのは、隣地の所有者に譲るケースです。土地が広がる、接道がよくなるといった利点があるためです。

Q. 自治体に寄付できますか?

A. 多くの場合、受け取ってもらえません。自治体が土地建物を受け取ると固定資産税が入らなくなり、管理の負担も生じるためです。受け取るのは、行政が利用する具体的な計画がある場合に限られます。まずは自治体の担当窓口に問い合わせて、寄付の受付があるかを確かめてください。断られた場合は、空き家バンクへの登録や、相続土地国庫帰属制度の検討に進むことになります。

Q. 解体してから売るべきですか?

A. 一概には言えません。更地のほうが買い手がつきやすい地域もありますが、建物を壊すと固定資産税の住宅用地の特例が外れ、翌年から土地の税負担が上がる場合があります。また、解体費用は戻ってきません。売れる見込みが立ってから解体する、買主が解体を前提に買う、といった進め方もあります。解体を決める前に、不動産会社と税の負担について確かめてください。

Q. いつまで待てばよいですか?

A. 期限はありませんが、2つの時計が動いています。1つは管理の費用で、待つあいだも毎年かかります。もう1つは税の特例の期限で、相続した家を売る場合に使える特例には、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までという要件があります。この2つを踏まえて、「あと何年なら待てるか」をご自身で決めてください。待つと決めたなら、それも立派な判断です。

まとめ|原因を切り分けてから、順番に試す

  1. まず「問い合わせの数」で、値段・物件・売り方のどれが原因かを切り分ける
  2. 価格は根拠を持って一度にまとまった幅で見直す。小刻みな値下げはかえって長引く
  3. 全国版空き家・空き地バンクは2017年10月に試行運用、2018年4月に本格運用。自治体が参加して物件を登録する仕組み
  4. 買取は早いが価格は市場より低くなる。地方では買取自体を断られることもある
  5. 自治体への寄付はほとんど受け付けられない。隣地の所有者へ譲るほうが成立しやすい
  6. 相続土地国庫帰属制度は最後の選択肢。建物があると申請できず、審査手数料14,000円と負担金20万円〜がかかる
  7. 持ち続ける費用と、手放すための費用を金額で並べて決める

※この記事の制度・数値は、下記の出典を 2026年10月9日 に確認したものです。制度は改正されることがありますので、実際の手続きの前に最新の公表をご確認ください。

売れない理由の切り分けから、一緒に始めませんか

「問い合わせが来ないのは、値段のせいか、物件のせいか」。まずここをはっきりさせましょう。そのうえで、価格の見直し、空き家バンク、買取、譲渡、国庫帰属のどこまで検討するかを順番に整理します。首都圏にお住まいの方から、地方のご実家についてのご相談をいただく機会は近年少しずつ増えています。大手が扱いにくいとされる案件も、一件ずつ丁寧に扱います。焦って決める必要はありません。納得いくまで、何度でもお付き合いします。匿名でのご相談も承ります。

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