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地方の実家相続

遠方の実家を売る段取り|不動産売却で現地に行く回数と立ち会い

2026年10月2日

実家は新幹線で片道4時間。仕事を休んで何度も帰るのは難しい。
売りたい気持ちはあるけれど、何回帰省すればいいのか見当がつかない。

首都圏にお住まいで、地方の実家を相続された方からのご相談は、近年少しずつ増えています。そして、最初にぶつかる壁は、たいてい「回数」の問題です。

結論から申し上げます。遠方の実家の不動産売却で、現地に行くのは、多くの場合「片付け」と「引き渡し」の2回前後に絞れます。査定も、媒介契約(不動産会社に売却を頼む契約)も、書類のやり取りも、今は遠隔でできる部分が広がっているからです。なお、引き渡し(決済)の立ち会いは原則としてご本人が出席します。代理人を立てられる場合もありますが、条件があります。

この記事では、どこまで遠隔で進められて、どこは現地に行く必要があるのかを、順番に分けて整理します。相続した実家を売るかどうかを含めた全体の流れは、遠方の実家を相続したら|首都圏から進める手順にまとめていますので、あわせてご覧ください。

細井誠

✍️ この記事を書いた人

FPマイスターホーム代表 細井 誠(宅地建物取引士・AFP)

相模原に暮らして40年以上、町田で不動産の仕事をして20年以上。これまで1,000件以上のご相談をお受けしてきました。「買える家」ではなく、「無理なく、幸せに暮らせる家」をご提案します。趣味はトライアスロン。お客様が納得されるまで、最後までお付き合いします。プロフィール

目次

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この記事でわかること

結論:遠方の不動産売却で立ち会いが要るのは「片付け」と「引き渡し」

売却の工程を、行く必要があるかどうかで分けると、次のようになります。

遠方の実家を売るときの「行く/行かない」

工程 現地に行く必要 補足
査定を受ける 行かなくてよいことが多い 室内の様子は写真・動画で共有できる
不動産会社を選ぶ 行かなくてよい 電話・オンラインで面談できる会社が増えた
媒介契約を結ぶ 行かなくてよいことが多い 郵送や電子契約に対応する会社がある
残置物の片付け 行ったほうがよい 何を残し何を処分するかの判断が要る
境界の確認・測量の立ち会い 場合により必要 隣地の方と顔を合わせる場面がある
売買契約 行かなくてよいことが多い 持ち回り契約や電子契約という方法がある
決済・引き渡し 原則として行く(代理人を立てられる場合もある) 司法書士による本人確認が必要

「2回前後」というのは、片付けと引き渡しを別の日に行う前提です。片付けを業者に任せ、引き渡しを代理人に委ねれば、理屈のうえでは0回にすることもできます。ただし、それがご自身にとって良い選択かは別の話です。後ほど説明します。

整理すると、現地での立ち会いが原則として必要なのは「引き渡し(決済)」、現地作業として行ったほうがよいのが「片付け」です。この2つを同じ帰省でまとめられるかが、回数を決めます。

💡 FP細井のワンポイント本音アドバイス

最初のご相談で、私はいつも「何回なら帰れますか」と伺います。回数の上限が決まれば、そこから逆算して段取りを組めます。無理のない回数を先に決めてしまうほうが、結果的に早く進みます。

遠方の実家を売却する流れ|行く用事をまとめる並べ方

近所の家を売るときと、遠方の実家を売るときでは、工程の順番が変わります。遠方の場合は、現地に行く用事をまとめることを優先します。

  1. 登記簿で名義を確かめる(亡くなった方のままなら相続登記が先)
  2. 遺産分割の話し合いをまとめる
  3. 不動産会社に査定を依頼する(写真・資料で遠隔)
  4. 媒介契約を結ぶ
  5. 【帰省1回目】 残置物の片付け、室内・境界の確認、鍵の取り扱いを決める
  6. 売却活動(内見の対応は不動産会社が行う)
  7. 売買契約(持ち回り・電子契約が使える場合が多い)
  8. 【帰省2回目】 決済・引き渡し(代理人を立てる選択肢もある)

帰省の前に、名義を確かめる

名義が亡くなった方のままだと、買主へ名義を移せないため引き渡しができません。帰省の予定を立てる前に、登記事項証明書で今の名義を確かめてください。制度の詳しい話は、このあとの章で触れます。

「買いたい人が現れてから登記」では間に合いません

購入希望の方が現れてから相続登記を始めると、戸籍を集めて遺産分割をまとめるまでに数か月かかることがあります。その間に買主が別の物件を決めてしまえば、その話は流れます。売ると決めたら、登記を先に済ませてください。

💡 FP細井のワンポイント本音アドバイス

遠方の売却でいちばん時間を食うのは、現地での作業ではなく、書類と話し合いです。ここは首都圏にいてもできます。帰省の予定を立てる前に、登記と遺産分割の見通しを立ててください。

オンラインと郵送でできること|査定・媒介契約・書類のやり取り

思っている以上に、行かずにできることは増えています。

査定

査定は、登記簿・公図・固定資産税の納税通知書といった書類と、現地の写真があれば進められます。室内の写真が手元になければ、不動産会社に現地を見てもらい、写真や動画を送ってもらうこともできます。

不動産会社選び

電話やオンライン面談で、担当者の説明の仕方や、質問への答え方を確かめられます。遠方の売却では、こまめに状況を知らせてくれるかどうかが、そのまま安心感につながります。

媒介契約

不動産会社に売却を頼む契約を媒介契約といいます。郵送でのやり取りに対応している会社が多く、電子契約を使える会社もあります。

売買契約

売主と買主が同じ場で署名押印する形が一般的ですが、遠方の場合は、契約書を郵送で回して順に署名する持ち回り契約という方法があります。電子契約に対応している会社なら、さらに手間が減ります。

遠隔で進めるときに用意しておくもの

書類 どこで手に入るか
登記事項証明書 法務局(オンライン請求もできる)
公図・地積測量図 法務局
固定資産税の納税通知書・評価証明書 物件のある市区町村
建物の図面・建築確認の書類 実家に保管されていることが多い
本人確認書類 手元のもの

💡 FP細井のワンポイント本音アドバイス

「地元の会社でないと分からないことがあるのでは」と心配される方がいます。相場や買主の動きは、たしかに地元の会社が詳しい場面もあります。だからこそ、どこに頼むかより、誰が窓口として動いてくれるかを確かめてください。

現地に行く必要があること|残置物の片付け・境界・引き渡し

一方で、行ったほうがよい場面もはっきりしています。

残置物の片付け

家財道具が残ったままだと、売りにくくなります。そして、何を残して何を処分するかは、ご家族にしか決められません。

業者に一括で任せることもできますが、位牌・写真・権利証・保険証券など、後から「あれはどこへ行った」となるものが出てくることがあります。一度は中に入って、自分の目で確かめることをおすすめします。

境界の確認・測量の立ち会い

土地の境界がはっきりしていない場合、測量と境界確定が必要になることがあります。隣地の方の立ち会いと同意が要るため、日程の調整を含めて時間がかかります。売却の予定が見えてきたら、早めに不動産会社に確認してください。所有者が顔を出すかどうかで、話の進み方が変わることもあります。

決済・引き渡し

売買代金を受け取り、鍵と書類を渡す場面です。司法書士が登記のために本人確認を行いますので、原則としてご本人の出席(立ち会い)が求められます。代理人を立てる場合でも、司法書士から電話やオンラインでの意思確認を求められます。

片付けを丸ごと業者任せにしたときに起きること

家財の処分を全部任せてしまうと、古い権利証や、親御さんが残した手紙、現金など、取り返しのつかないものまで処分されることがあります。処分は取り消せません。費用より、確かめる時間を優先してください。

💡 FP細井のワンポイント本音アドバイス

帰省の日程を組むときは、片付けの日に不動産会社との現地打ち合わせを重ねると効率がよくなります。境界の確認や、設備の状態、近隣への挨拶まで、一度で済ませられます。

相続登記が先|名義の確かめ方と、売却に間に合わせる順番

繰り返しになりますが、ここは順番を間違えやすいところです。

登記簿の名義が亡くなった方のままである限り、売買契約は結べても、引き渡しができません。買主への名義変更ができないからです。

遺産分割がまとまらないときは

きょうだいで意見が分かれ、遺産分割が進まないこともあります。その場合でも、相続登記の申請義務には期限があります。すぐに登記できないときは相続人申告登記という受け皿がありますが、売却するには別途、正式な相続登記が必要です。売ると決めているなら、最初から相続登記を目指すほうが早く済みます。

義務化の中身(施行日・期限・過料・相続人申告登記の使い方)は相続登記の義務化で何が変わった?にまとめていますので、そちらをご覧ください。

💡 FP細井のワンポイント本音アドバイス

「売却の話が具体化してから登記すればいい」と考えると、たいてい間に合いません。登記は、売る・貸す・持ち続けるのどれを選んでも必要になる準備だとお考えください。

不動産売却で委任状・代理人を使うときの注意

どうしても行けない場合、代理人を立てる方法があります。ただし、注意点があります。

誰に頼むか

ご家族・親族に頼むのが一般的です。司法書士に手続きの一部を委任することもあります。

委任状は「何を任せるか」を具体的に書く

「一切を委任する」という広い書き方は、後々のトラブルのもとになります。売買契約の締結、代金の受領、鍵の引き渡しなど、任せる行為を個別に書くほうが安全です。

実印と印鑑証明書が必要

代理で手続きを進める場合、実印を押した委任状と、印鑑証明書が求められます。印鑑証明書には提出先ごとに有効期限が定められていることがありますので、いつ取るかも不動産会社・司法書士に確認してください。

司法書士の本人確認は省けない

登記を担当する司法書士は、売主本人の意思を確認する必要があります。代理人を立てる場合でも、電話やオンラインでの面談を求められることがあります。「代理人を立てれば一切関わらなくてよい」わけではありません。

きょうだいの1人に全部任せる形は、後で揉めやすい

遠方の実家では、「動ける1人」に手続きが集中しがちです。そのときに、売却価格・費用・手取りの配分を書面で共有しておかないと、後から不信感が生まれます。手間でも、経過を全員に知らせる形にしてください。

💡 FP細井のワンポイント本音アドバイス

委任状は、不動産会社や司法書士がひな形を用意してくれます。ご自身で一から作る必要はありません。ただし、中身は必ずご自身で読んでください。

FPの視点|空き家の維持費と帰省の費用を「持ち続ける費用」として並べる

遠方の実家を売るかどうかを考えるとき、売却価格ばかりに目が向きがちです。しかし家計から見ると、持ち続けている間に出ていくお金も同じくらい重要です。

持ち続けている間にかかるもの

  • 固定資産税・都市計画税(住んでいなくても課されます)
  • 火災保険(空き家は契約の条件が変わることがあります)
  • 電気・水道の基本料金(管理のために残す場合)
  • 草刈り・見回りなどの管理費用
  • 帰省のたびの交通費

税の期限にも、段取りが関わります

相続した家を売るときは、譲渡所得の特例に期限が設けられているものがあります。期限を過ぎると使えなくなる場合がありますので、売却の時期を決める前に売却時の税金|3,000万円控除の使い方で要件と期限をご確認ください。適用の可否は税務署か税理士にご相談ください。

売却にかかるもの

  • 仲介手数料
  • 印紙税
  • 登記に関する費用(相続登記、抵当権抹消がある場合)
  • 残置物(家に残された家財道具)の処分費用
  • 測量が必要な場合はその費用

「あと1年待つ」の値段を出してみる

判断に迷ったら、1年持ち続けた場合に出ていく金額を紙に書き出してみてください。固定資産税、保険、管理、帰省の交通費。ここに、売却が1年遅れることで変わるかもしれない価格の見通しを、幅で当てはめます。金額にすると、「待つ」という選択にも値段があることが見えてきます。なお、将来の価格がどうなるかを私が断定することはできません。あくまでご自身の判断材料としてお使いください。

💡 FP細井のワンポイント本音アドバイス

譲渡所得を計算するとき、取得費や譲渡費用として何を差し引けるかは、税の要件で決まっています。領収書は捨てずに残しておいてください。判断に迷うものは、税務署か税理士にご確認を。

向かない人・よくある失敗|遠方の実家売却の注意点と次に確かめること

この進め方が向かない方

  • 相続人の間で、売るかどうかの合意ができていない方(まず話し合いが先です)
  • 建物に人が住んでいる、または賃貸に出している方(別の手続きが必要です)
  • 境界をめぐって隣地と争いがある方(解決が先になります)

よくある失敗

遠方の売却でよく起きる3つの失敗

1.登記を後回しにした → 買主が現れてから慌てて戸籍集め。話が流れることがあります

2.片付けを全部任せた → 大事な書類や思い出の品まで処分されてしまった

3.窓口を分散させた → 複数の会社・親族に別々に連絡した結果、誰が何を進めているか分からなくなった

次に確かめること

まず、登記事項証明書を取って、今の名義を確かめてください。法務局の窓口のほか、オンラインでも請求できます。名義が亡くなった方のままであれば、売却より先に相続登記です。

そのうえで、「何回なら帰省できるか」をご自身で決めてください。回数が決まれば、段取りはそこから組み立てられます。

💡 FP細井のワンポイント本音アドバイス

帰省の回数は、多い少ないで良し悪しが決まるものではありません。ご自身の仕事や体調に合わせて、無理のない回数を先に決めてしまう。そのほうが、途中で止まらずに最後まで進みます。

よくある質問

Q. 一度も現地に行かずに売ることはできますか?

A. 条件が揃えば可能です。片付けを業者に任せ、売買契約を持ち回りや電子契約で行い、決済の立ち会いを代理人に委ねる形です。ただし決済の立ち会いは原則としてご本人ですので、代理人を立てられるかは個別の事情によります。また司法書士による本人確認は省けないため、電話やオンラインでの面談を求められます。また、残置物の処分を全て任せると、大事な書類や思い出の品まで処分されてしまうことがあります。可能かどうかと、おすすめできるかどうかは別だとお考えください。

Q. 残置物はどうすればよいですか?

A. 家財道具が残ったままでも売れないわけではありませんが、買主が見つかりにくくなり、価格の交渉材料にもなります。基本は、貴重品と思い出の品をご自身で選び出し、残りを業者に依頼する形です。位牌・写真・権利証・保険証券・現金は、処分される前に確かめてください。買主が解体を前提に購入する場合は、残置物ごと引き渡せることもありますので、不動産会社にご相談ください。

Q. きょうだいが全国に散っていて、集まれません。

A. 全員が同じ場に集まらなくても進められます。遺産分割協議書は郵送で順に署名押印する形が使えますし、売買契約も持ち回りが可能です。大切なのは、誰が窓口になるかを決め、経過と金額を全員に共有することです。動ける1人に任せきりにすると、情報が偏り、後から不信感が生まれやすくなります。

Q. 売却にはどのくらいの期間がかかりますか?

A. 物件の場所・状態・価格の設定で大きく変わるため、一律の目安は申し上げられません。ただし、遠方の実家では「売り出してから」よりも「売り出すまで」に時間がかかる傾向があります。相続登記、遺産分割、残置物の片付け。この3つの見通しが立つと、全体の予定も立てやすくなります。まずこの3つの状況を整理してください。

Q. 地元の不動産会社と、首都圏の不動産会社、どちらに頼むべきですか?

A. どちらが正しいということはありません。地元の会社は買主の動きや地域の事情に詳しく、首都圏の会社はご自身と会って話せる近さがあります。会社の場所より「窓口が1つにまとまっているか」「連絡がこまめに来るか」を見てください。実家の近くの会社に問い合わせても別の窓口を案内されて話が進まない、というご相談は、近年少しずつ増えています。

まとめ|帰省の回数を決めてから、段取りを組む

  1. 遠方の実家を売るとき、現地に行く回数は「片付け」と「引き渡し」の2回前後に絞れることが多い
  2. 査定・不動産会社選び・媒介契約・売買契約は、写真や郵送、電子契約で遠隔でも進められる
  3. 売る前に相続登記が必要。名義が亡くなった方のままだと引き渡しができない
  4. 代理人を立てる場合、委任状は任せる行為を個別に書く。司法書士の本人確認は省けない
  5. 固定資産税・保険・管理費・帰省の交通費も「持ち続ける費用」。売却費用と並べて比べる

遠方の実家のこと、段取りから一緒に整理します

「何から手を付ければいいのか分からない」「何回帰ればいいのか見当がつかない」。そこからのご相談で構いません。首都圏にお住まいの方から、地方の実家についてのご相談をいただく機会は近年少しずつ増えています。手続きの流れや段取りを間違えると、それだけで時間がかかります。町田で不動産の仕事を20年以上、宅地建物取引士とAFPの両方の立場で、面倒な事情のある案件を扱ってきました。匿名でのご相談も承ります。

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