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地方の実家相続

相続土地国庫帰属制度とは|要件・費用と使える土地・使えない土地

2026年10月14日

「相続した田舎の土地を、国が引き取ってくれる制度があると聞いた」
「売れない山林を手放したい。あの制度は使えるのだろうか」

首都圏にお住まいの方からの、地方の実家のご相談は近年少しずつ増えています。

先に、いちばん大事なところを申し上げます。相続土地国庫帰属制度で引き取ってもらえる土地は、かなり限られます。 とくに建物が建っている土地は、申請そのものができません。実家の相続で多い「古い家が建ったままの土地」は、解体しない限り対象外です。

それでも、条件が合えば手放す道になります。この記事では、法務省が公表している要件と費用を、できない条件のほうから順に整理します。この記事では、できない条件のほうから順に整理します。

細井誠

✍️ この記事を書いた人

FPマイスターホーム代表 細井 誠(宅地建物取引士・AFP)

相模原に暮らして40年以上、町田で不動産の仕事をして20年以上。これまで1,000件以上のご相談をお受けしてきました。「買える家」ではなく、「無理なく、幸せに暮らせる家」をご提案します。趣味はトライアスロン。お客様が納得されるまで、最後までお付き合いします。プロフィール

目次

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この記事でわかること

結論:相続土地国庫帰属制度で引き取ってもらえる土地は限られる

制度の全体像を先に置きます。

相続土地国庫帰属制度の要点(法務省の公表による。令和7年9月1日現在のQ&A等)

項目 内容
始まった日 令和5年(2023年)4月27日
使える人 相続または相続人への遺贈で土地を取得した人
制度開始前の相続 対象になる(令和5年4月27日以前に相続した土地も可)
審査手数料 土地1筆あたり14,000円(収入印紙。取下げ・却下・不承認でも返還されない)
負担金 20万円が基本。市街化区域などの宅地・農地と森林は面積に応じて増える

建物があると、入口で止まります

却下事由の1番目が「建物がある土地」です。却下事由の1番目に当たるため、建物が建っている土地は申請できません。解体してから申請することはできますが、解体費用がかかります。

💡 FP細井のワンポイント本音アドバイス

「引き取ってもらえる」と聞くと手軽に感じますが、入口が狭い制度です。まず自分の土地が却下事由に当たらないかを確かめるところから始めてください。当たっていれば、審査手数料を払う前に分かります。

相続土地国庫帰属制度はいつから始まったか|誰が使えるのか

相続土地国庫帰属制度は、相続した土地を国に引き取ってもらう仕組みです。令和5年4月27日に始まりました。

使える人

法務省の公表によれば、相続または相続人への遺贈によって土地を取得した人が申請できます。

  • 共有持分を相続等で取得した共有者は、共有者全員が共同で申請できます
  • 売買など、相続以外の原因で取得した人は基本的に使えません
  • 相続等により土地を取得できない法人も、基本的に使えません

制度が始まる前に相続した土地も使えます

法務省のQ&A(令和7年9月1日現在)では、令和5年4月27日以前に相続した土地も対象になるとされています。何十年も前に相続した土地でも、要件を満たせば申請できます。

💡 FP細井のワンポイント本音アドバイス

制度が始まる前に相続した土地も対象です。時期は問いません。問題になるのは、土地の状態です。

国庫帰属が使えない土地|却下・不承認になる要件

ここがこの制度のいちばん重要なところなので、先に書きます。条件は却下と不承認の2段階に分かれています。

却下事由(申請そのものができない)

法務省が公表している5つです。

申請の段階で却下される土地

1. 建物がある土地

2. 担保権や使用収益権が設定されている土地(抵当権、地上権、地役権、賃借権など)

3. 他人の利用が予定されている土地(現に道路として利用されている土地、墓地内の土地、境内地、水道用地・用悪水路・ため池として利用されている土地)

4. 土壌汚染されている土地(法務省令で定める基準を超える特定有害物質によるもの)

5. 境界が明らかでない土地、または所有権の存否・帰属・範囲について争いがある土地

不承認事由(申請はできるが、審査で承認されない)

こちらも法務省の公表による5類型です。

審査で承認されない土地(法務省の公表による)

類型 内容
崖がある 勾配30度以上かつ高さ5メートル以上の崖があり、通常の管理に過分な費用・労力がかかる土地
地上に物がある 工作物・車両・樹木などが、通常の管理または処分を阻害している土地
地下に物がある 産業廃棄物、建築資材のガラ、古い水道管、浄化槽、井戸などの除去が必要な土地
争いがある 隣接地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
その他 災害の危険があり現状変更が必要/動物による被害がある/適切な造林・間伐が行われていない森林/国が金銭債務を負うことになる土地 など

実家の相続でつまずきやすいのは、1番目と5番目です

古い家が建ったままの土地(却下事由1)と、境界がはっきりしない土地(却下事由5)。建物と境界は、申請の前に必ず確かめる2点です。

💡 FP細井のワンポイント本音アドバイス

不承認事由は「通常の管理に過分な費用・労力がかかるか」という考え方で並んでいます。通常の管理に過分な費用・労力がかかる土地は対象外とされているということです。そう考えると、どんな土地が通るかの見当がつきます。

国庫帰属を申請できる人|相続で取得した土地であること

もう一度、整理します。

  • 相続または相続人への遺贈で取得した土地であること
  • 共有の場合は、共有者全員で申請すること
  • 相続した時期は問わない(制度開始前の相続も対象)

共有者の一人が反対しているとき

共有者全員での申請が必要ですので、一人でも反対していると申請できません。この場合は、先に遺産分割や共有状態の解消を考えることになります。きょうだいでの分け方はきょうだいで実家を相続したらにまとめています。

名義が亡くなった方のままのとき

先に相続登記が必要です。相続登記は令和6年4月1日から義務になっています。詳しくは相続登記の義務化で何が変わった?をご覧ください。

💡 FP細井のワンポイント本音アドバイス

制度を使うにしても、使わずに売るにしても、名義を自分に移すところは共通です。売る・使う・手放すのどれを選んでも必要になる手続きです。

相続土地国庫帰属制度の費用|審査手数料と負担金

お金の話です。2種類あります。

審査手数料

土地1筆あたり14,000円。申請のときに収入印紙で納めます。

申請を取り下げても、却下・不承認になっても返ってきません

審査手数料は、結果にかかわらず返還されないとされています。だからこそ、申請の前に却下事由に当たらないかを確かめる意味があります。

負担金

承認を受けた人が納めるお金です。国が10年分の管理費用を基準に算定します。

法務省のQ&A(令和7年9月1日現在)では、20万円が基本とされています。ただし、次の土地は面積に応じて20万円以上になります。

  • 市街化区域などの宅地
  • 市街化区域や農用地区域などの農地
  • 森林(面積に応じて算定)

雑種地や原野など、その他の土地は面積にかかわらず20万円が基本です。

負担金について押さえておきたいこと(法務省の公表による)

項目 内容
基本の額 20万円
面積に応じて増えるもの 市街化区域などの宅地・農地、森林
面積の基準 登記記録上の地積で算定する
納付の期限 負担金の通知が到達した日の翌日から30日以内。過ぎると承認が失効する
分割納付 できない

法務省は、負担金額の自動計算シート(Excel)も公表しています。おおよその額は、ご自身で試算できます。

💡 FP細井のワンポイント本音アドバイス

登記記録上の地積で算定される、という点は見落とされがちです。実際の面積と登記が食い違っている場合、原則として申請の前に地積の更正・変更の登記が必要になります。登記記録の地積で算定されるため、実測と食い違う場合は事前相談で確認してください。

国庫帰属の申請から承認までの流れと、かかる期間

おおまかな流れです。

  1. 却下事由に当たらないか確かめる(建物・担保権・境界)
  2. 法務局へ事前相談
  3. 承認申請(審査手数料 14,000円)
  4. 法務局による書面審査・実地調査
  5. 承認の通知と、負担金額の通知
  6. 負担金を30日以内に納付
  7. 国庫に帰属

期間について

期間は土地の状態や調査の内容によって変わります。実地調査が入る場合は長くなります。正確な見込みは、申請先の法務局にお尋ねください。

却下・不承認になったら

却下・不承認になった理由を解消すれば、あらためて申請できるとされています。ただし、支払った審査手数料は戻りません。

先に法務局の事前相談を使ってください

この制度は、申請してみないと分からない部分が残ります。だからこそ、法務局が設けている事前相談を先に使ってください。却下事由に当たることが分かれば、14,000円を使わずに済みます。

💡 FP細井のワンポイント本音アドバイス

手続きの代行は司法書士・弁護士・行政書士の領域です。私たち不動産会社は代理できませんので、この点は、はじめにお伝えしておきます。当社では、必要に応じて専門家をご紹介しています。

FPの視点|国庫帰属の負担金と、持ち続けた費用を比較する

この制度を使うかどうかは、金額で並べると判断しやすくなります。

制度を使う場合に出ていくお金

  • 審査手数料 14,000円(1筆あたり)
  • 負担金 20万円〜(宅地・農地・森林は面積に応じて増える)
  • 建物がある場合の解体費用
  • 境界が不明な場合の測量・境界確定の費用
  • 専門家に頼む場合の報酬

持ち続ける場合に出ていくお金

  • 固定資産税・都市計画税(毎年)
  • 草刈り・見回りなどの管理費用
  • 現地に行く交通費
  • 火災保険(建物がある場合)

「何年分で元が取れるか」で考える

負担金が20万円、固定資産税と管理費が年間3万円だとすると、単純計算で約7年分です。この先10年、20年持ち続けるつもりがないなら、手放す側で考える材料になります。逆に、使う予定がある土地なら、急いで手放す必要はありません。

なお、この試算は考え方を示すための例です。実際の負担金は土地の種目と面積で変わりますので、法務省の自動計算シートでご確認ください。

💡 FP細井のワンポイント本音アドバイス

売れるなら、諸費用と税を引いた手取りで比べてください。この制度は売れない土地の最後の選択肢です。順番としては、まず売却を試し、それが難しいときに検討する。地方の実家が売れないときの進め方は地方の実家が売れないときの選択肢にまとめています。

向かない人・よくある失敗|相続土地国庫帰属制度の注意点

この制度が使えない方

こういう土地は、別の道を考えてください

  • 建物が建っている → 解体するか、建物ごと売る方法を探す
  • 抵当権が残っている → 先に抹消が必要
  • 境界がはっきりしない → 測量と境界確定が先
  • 共有者の合意が取れない → まず遺産分割の話し合いから
  • 売れる見込みがある → 諸費用と税を引いた手取りで比べる

よくある勘違い

  1. 「国が無料で引き取ってくれる」 → 審査手数料と負担金がかかります
  2. 「相続放棄と同じようなもの」 → 相続放棄は他の財産も放棄します。この制度は土地だけです
  3. 「申請すれば通る」 → 却下事由・不承認事由に当たれば通りません。通らない土地があります

急がなくて大丈夫です

焦って決める必要はありません。納得いくまで、何度でもご相談にお付き合いします。制度を使うにしても、売るにしても、まずご自身の土地がどの状態にあるかを知ることが先です。

次に確かめること

まず、登記事項証明書(登記簿の写し)と公図を取って、次の3つを見てください。

  1. 名義は誰になっているか
  2. 抵当権などの登記が残っていないか
  3. 地目は何か(宅地・田・畑・山林・雑種地)

この3つが分かれば、却下事由に当たるかどうかの見当がつきます。そのうえで、法務局の事前相談へ進んでください。

💡 FP細井のワンポイント本音アドバイス

登記事項証明書は全国どこの法務局でも取れます。実家が遠方でも、お近くの法務局で大丈夫です。「関係あるか分からない」という段階の方こそ、まずこの1枚からです。

よくある質問

Q. 建物があるときは、どうすればよいですか?

A. 建物がある土地は却下事由に当たり、申請そのものができません。使うのであれば、解体して更地にしてから申請することになります。ただし解体費用がかかりますし、建物を壊すと固定資産税の住宅用地の特例が外れて、土地の税額が上がる場合があります。解体費用と税の増加を見積もったうえで、建物ごと売る方法と比べてください。空き家の費用については親の家が空き家になったらにまとめています。

Q. 複数人で相続した土地でも使えますか?

A. 使えます。共有持分を相続等で取得した共有者は、共有者全員が共同で申請できるとされています。逆に言えば、一人でも反対していると申請できません。連絡が取れない共有者がいる場合も同じです。まず共有関係を整理することが先になります。

Q. 農地や山林でも使えますか?

A. 対象から外れているわけではありませんが、注意点があります。森林は面積に応じて負担金が算定されるため、広いほど負担金が大きくなります。また、適切な造林・間伐・保育が行われておらず国による整備が必要な森林は、不承認事由に挙げられています。農地についても、市街化区域や農用地区域などの農地は面積に応じた算定になります。ご自身の土地がどれに当たるかは、法務局の事前相談でご確認ください。

Q. 却下されたら、どうなりますか?

A. 審査手数料は返還されません。ただし、却下・不承認となった理由を解消すれば、あらためて申請することはできるとされています。たとえば境界が明らかでないことが理由なら、測量と境界確定をしてから再申請する形です。費用がかさみますので、最初の申請の前に事前相談を使うことをおすすめします。

Q. 売るのと、この制度と、どちらを先に考えるべきですか?

A. 売却を先に考えてください。売れた場合は、諸費用と税を引いた手取りが残ります。この制度は負担金を払って手放す仕組みです。順番としては、①相場を確かめて売りに出す、②価格や売り方を見直す、③買取や空き家バンクを試す、④それでも難しければこの制度を検討する、という流れが現実的です。詳しくは地方の実家が売れないときの選択肢をご覧ください。

まとめ|まず却下事由に当たらないかを確かめる

  1. 相続土地国庫帰属制度は令和5年4月27日に始まった。制度開始前に相続した土地も対象になる
  2. 建物がある土地・担保権が設定されている土地・境界が明らかでない土地などは、申請そのものができない(却下事由)
  3. 申請できても、崖・地下の埋設物・争訟が必要な状態などで不承認になることがある
  4. 費用は審査手数料が1筆14,000円(返還されない)、負担金は20万円が基本。市街化区域などの宅地・農地と森林は面積に応じて増える
  5. 負担金は通知から30日以内に納付。分割はできない。面積は登記記録上の地積で算定する
  6. 売れるなら売るほうが手元に残る。この制度は売れない土地の最後の選択肢として考える

※この記事の制度・数値は、下記の出典を 2026年10月9日 に確認したものです。制度は改正されることがありますので、実際の手続きの前に最新の公表をご確認ください。

使える土地かどうか、一緒に確かめます

「うちの土地は対象になるのだろうか」という段階でご相談ください。登記事項証明書と公図の見方から、却下事由に当たらないかの確認、売却と比べてどちらが有利かの整理までお手伝いします。焦って決める必要はありません。納得いくまで、何度でもお付き合いします。手続きの代行は司法書士・行政書士の領域ですので、必要に応じて専門家をご紹介します。匿名でのご相談も承ります。

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