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地方の実家相続

兄弟で実家を相続したら|共有名義を避けたい理由と分け方

2026年10月13日

「とりあえず、兄弟3人の共有にしておこうと思う」
「誰も住まないし、売るかどうかも決まらない。名義だけ分けておけばいいのでは」

実家の相続で、いちばん先に思いつく形だと思います。ただ、後からやり直しにくい選択です。

先に申し上げます。共有名義は「今は楽、あとで動かせない」形です。 話し合いを先送りできる代わりに、売るときも貸すときも全員の同意が要る状態を、次の世代まで持ち越すことになります。

この記事では、共有にすると何が起きるかを先にお伝えし、そのうえで分け方の4つの選択肢と、話し合いを進める順番を整理します。

なお、相続人の範囲や遺言の有効性、揉めたときの手続きは弁護士・司法書士の領域です。当社が代理することはできませんので、そこは正直に申し上げます。

細井誠

✍️ この記事を書いた人

FPマイスターホーム代表 細井 誠(宅地建物取引士・AFP)

相模原に暮らして40年以上、町田で不動産の仕事をして20年以上。これまで1,000件以上のご相談をお受けしてきました。「買える家」ではなく、「無理なく、幸せに暮らせる家」をご提案します。趣味はトライアスロン。お客様が納得されるまで、最後までお付き合いします。プロフィール

目次

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この記事でわかること

結論:実家を兄弟で相続するとき、共有名義は「今は楽、あとで詰む」

まず、4つの分け方を並べます。

実家の分け方は4つ

分け方 中身 向く場面
現物分割 不動産はAさん、預貯金はBさん、と現物のまま分ける 実家以外にも財産がある
換価分割 売って、お金を分ける 誰も住まない。現金化したい
代償分割 一人が取得し、他の相続人にお金を払う 一人が住み続ける
共有 持分を決めて全員の名義にする おすすめしない

まず、自分の持分がどれだけかを確かめる

分け方を決める前に、法律上の割合(法定相続分)を知っておいてください。民法の定める割合です。

法定相続分(民法の定めによる)

相続人 割合
子だけ(配偶者がいない) 子で等分。きょうだい3人なら各3分の1
配偶者と子 配偶者2分の1、残りの2分の1を子で等分

遺言があれば、それが優先します(遺留分の問題は残ります)。遺言がなく、話し合いでも決まらない場合は、この割合が出発点になります。

この割合どおりに分けなければならない、という決まりではありません。 全員が合意すれば、どう分けても構いません。

共有が「楽」に見える理由

決めなくていいからです。誰が取るかを話し合わずに、法定相続分のまま登記できます。相続登記の期限も、これで満たせます。

それでも避けたい理由

次の章で詳しく書きますが、ひとことで言うと「動かせない財産」になるからです。

💡 FP細井のワンポイント本音アドバイス

「とりあえず共有で」と考えるときは、「10年後、誰かが売りたいと言ったらどうするか」を先に決めてください。ここに答えが用意できていれば共有でも構いません。用意できていないなら、今のうちに分け方を決めたほうが楽です。

共有名義のデメリット|不動産は売るときも貸すときも全員の同意

先にデメリットを書きます。

① 売るには全員の同意が要る

共有不動産の売却には、共有者全員の合意が必要です。一人でも反対すれば売れません。

② 貸す・大きな修繕にも制約がある

賃貸に出す、大規模なリフォームをする、といった行為にも、持分に応じた同意が必要になります。

③ 相続人が増えていく

これがいちばん重い問題です。共有者の誰かが亡くなると、その持分がさらに相続されます。

世代を越えると、人数が一気に増えます

きょうだい3人で共有 → 20年後、それぞれに子が2人ずついれば、共有者は6人以上に。さらに次の世代へ進むと、顔も知らない親戚との話し合いになります。これまでに、数次相続で、相続人が10人を超える案件を扱ったことがあります。

④ 費用の負担で揉める

固定資産税、火災保険、管理費用。これらは持分に応じて負担するのが原則ですが、近くに住んでいる一人が立て替える形になると、負担が偏ります。それが何年も続くと、不公平感が生まれます。

⑤ 自分の持分だけ売ることもできるが、現実的ではない

法律上は、自分の持分だけを売ることもできます。ただし、持分だけを買う相手は見つかりにくく、価格も下がります。買うのは専門の業者で、価格は大きく下がります。そして、見知らぬ第三者が共有者になることで、話がさらにこじれます。

💡 FP細井のワンポイント本音アドバイス

共有を避けたい理由は、感情ではなく構造です。合意が必要な人数が、時間とともに増えていく。この一点に尽きます。今3人で決められるなら、今決めるほうが手間も費用も少なく済みます。

すでに共有名義になっている場合の3つの出口

ここまでは「これから分ける」話でした。すでに共有になっている方のために、出口を書きます。

共有を解消する3つの道

道 中身 難しさ
話し合って持分を集める 一人が他の共有者から持分を買い取るか、贈与を受ける 全員の合意が要る
第三者に持分を売る 自分の持分だけなら、他の共有者の同意なく売れる 買い手が限られ、価格も下がる
共有物分割請求 裁判所に分割を求める。現物で分ける・競売して分けるなどの判断が出る 訴訟になる。弁護士の領域

共有物分割請求は、最後の手段です

共有者の一人は、いつでも共有物の分割を請求できます。ただし、話し合いで決まらない場合は裁判所の手続きになり、競売で分けるという判断が出ることもあります。きょうだいの関係も戻りにくくなります。

まずは話し合いで持分を集める道を探してください。 手続きそのものは弁護士の領域ですので、揉めている場合は弁護士にご相談ください。

遺産分割の方法は4つ|現物分割・換価分割・代償分割・共有

それぞれを詳しく見ます。

① 現物分割

財産をそのままの形で分けます。「実家は長男、預貯金は次男、株式は三男」といった分け方です。

  • 向く場面:実家以外にもまとまった財産がある
  • 難しい点:不動産の評価額が大きいと、他の財産では釣り合わない

② 換価分割

実家を売って、代金を分けます。

  • 向く場面:誰も住まない。全員が現金を希望している
  • 難しい点:売れるまで分けられない。売却価格が読めない
  • 税:売却益が出れば譲渡所得として課税されます

③ 代償分割

一人が実家を取得し、その人が他の相続人に代償金を払います。

  • 向く場面:一人が住み続ける。実家を手放したくない
  • 難しい点:取得する人に、代償金を払える資力が必要

④ 共有

持分を決めて、全員の名義にします。

  • 向く場面:限られます。近いうちに売る前提で、一時的に共有にする場合など
  • 難しい点:上の章のとおり

4つの分け方の比べ方

現物分割 換価分割 代償分割 共有
実家に住み続けられるか 取得者は住める 住めない 取得者は住める 制約あり
まとまったお金が要るか 不要 不要 要る(代償金) 不要
売却益への課税 なし あり得る なし 売却時にあり得る
将来の揉めにくさ 揉めにくい 揉めにくい 揉めにくい 揉めやすい

💡 FP細井のワンポイント本音アドバイス

どれが良いということではありません。ご家族の事情で決まります。 ただし、共有は「決められないから残る」形になりやすく、そこが問題です。他の3つは分け方を決めた結果ですが、共有は決めないまま残る形です。

換価分割と代償分割の違い|それぞれが向く家族・向かない家族

もう少し具体的にします。

現物分割が向く

  • 実家以外に、預貯金・有価証券などがまとまってある
  • 相続人の間で、欲しいものが分かれている

換価分割が向く

  • 誰も住む予定がない
  • 全員が現金を希望している
  • 売れる見込みのある物件である

換価分割は「売れること」が前提です

地方の実家で買い手がつかない場合、換価分割は成立しません。先に売れるかどうかを確かめてください。売れない場合の選択肢は地方の実家が売れないときの選択肢にまとめています。

代償分割が向く

  • 一人が実家に住んでいる、または住む予定がある
  • その人に、代償金を払える資力がある

代償金が払えない場合

住み続けたい方に資力がないと、代償分割は成立しません。この場合、住宅ローンを組んで代償金を用意する、実家を担保に借りる、といった方法を検討することになります。金融機関によって扱いが違いますので、早めにご相談ください。

共有でもよい場合

  • 近いうちに売ることが全員で決まっていて、そのための一時的な共有
  • 相続登記の期限が迫っていて、まず登記を済ませたい場合

💡 FP細井のワンポイント本音アドバイス

期限のために一時的に共有にするのは、現実的な判断です。ただし、「いつまでに分け直すか」を書面で決めておいてください。 それがないと、そのまま何十年も続きます。

遺産分割協議の進め方|何から決めるか

揉めない進め方には、順番があります。

話し合いの順番

1. 実家をどうするか(売る・誰かが住む・貸す・持ち続ける)を先に決める

2. それに合う分け方を選ぶ(売る→換価分割、住む→代償分割)

3. 評価額を確かめる(査定を取る)

4. 具体的な金額を詰める

5. 遺産分割協議書にまとめる

6. 相続登記をする

「誰がいくら」から始めない

つまずきやすいのは、お金の話から始めることです。「3分の1ずつだから、いくらずつ」と始めると、評価額で揉めます。

先に「実家をどうするか」で合意できれば、分け方は自然に決まります。

全員が同じ情報を持つ

遠方のきょうだいがいると、情報に差が出ます。近くにいる人だけが実家の状態を知っている、という状態では、話が進みません。

  • 写真を撮って共有する
  • 査定書を全員に送る
  • 固定資産税の納税通知書を共有する

💡 FP細井のワンポイント本音アドバイス

動ける一人に任せきりにすると、情報が偏り、後から不信感が生まれやすくなります。経過と金額を全員に知らせ続けること。 手間ですが、これが、話がこじれにくい形です。

遺産分割と相続登記の期限との関係

分け方が決まらなくても、登記の期限は進みます。

相続登記は令和6年4月1日から義務になり、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内の申請が必要です。さらに、遺産分割が成立した場合は、その日から3年以内に、その内容で登記をする義務があります。

話し合いがまとまらないとき

すぐに登記できない場合の受け皿として、相続人申告登記があります。特定の相続人が単独で申し出でき、登録免許税もかかりません。

ただし、これは期限を満たすための応急処置です。売るには別途、正式な相続登記が必要です。

制度の詳しい内容は相続登記の義務化で何が変わった?にまとめています。

「話し合い中だから期限は止まる」ではありません

分割が決まっていなくても、3年の期限は進んでいます。相続登記のご相談は、ここ最近は増えています。期限を気にして慌てて共有にする前に、相続人申告登記という手があることを知っておいてください。

💡 FP細井のワンポイント本音アドバイス

順番としては、①相続人申告登記で期限を満たす → ②落ち着いて分け方を話し合う → ③決まったら正式な相続登記、という形が無理がありません。

FPの視点|相続の「公平」な分け方と「同額」は違う

お金の話がこじれる理由は、ここにあります。

同じ金額でも、価値は同じとは限りません

  • 実家の不動産 3,000万円
  • 預貯金 3,000万円

金額は同じですが、中身はまったく違います。不動産は、売るまで現金になりません。売却の手間も、税金も、管理の負担もついてきます。

不動産を取る人が背負うもの

実家を取得する人が引き受けるもの

引き受けるもの 内容
固定資産税・都市計画税 毎年
火災保険 毎年
管理・修繕 建物が古いほど重い
売るときの手間と費用 仲介手数料・残置物処分・測量など
売れないリスク 地方では現実の問題

だから「同額で分けたら公平」ではありません

不動産を取る人の負担を考えに入れないと、後から不満が出ます。逆に、不動産を取る人が「自分だけ損をした」と感じることもあります。

手取りで分ける

売って分ける場合は、税金と費用を引いた後の金額で分けてください。売却価格で割って約束すると、税金を払った後で足りなくなります。取得費が分からない物件では、思っていたより税負担が大きくなることがあります。詳しくは相続した実家を売ったときの税金をご覧ください。

💡 FP細井のワンポイント本音アドバイス

「公平」は金額だけでは決まりません。誰が親の介護をしたか、誰が実家を維持してきたか。そういう事情も含めて話し合うほうが、納得のいく結論になります。法律上の取り分とは別の話として、テーブルに乗せてください。

向かない人・よくある失敗|実家の相続で揉める前に確かめること

この記事の範囲を超える方

こういう場合は、先に専門家へ

  • すでに揉めていて、話し合いができない → 弁護士へ。家庭裁判所の遺産分割調停という手続きがあります
  • 相続人の範囲がはっきりしない → 戸籍の収集から。司法書士・弁護士へ
  • 遺言書がある → 内容と有効性の確認が先です
  • 連絡が取れない相続人がいる → 探索が必要です。専門家へ
  • 親御さんがご存命で、判断能力に不安がある → 認知症になった親の家は売れる?へ

よくある失敗

  1. 「とりあえず共有」で何十年も放置した → 相続人が増え、合意がますます難しくなります
  2. お金の話から始めた → 実家をどうするかを先に決めてください
  3. 売却価格で分け方を約束した → 税金と費用を引いた手取りで決めてください
  4. 近くにいる一人に任せきりにした → 情報の偏りが不信感を生みます
  5. 期限に追われて慌てて共有にした → 相続人申告登記という手があります

急がなくて大丈夫です

焦って決める必要はありません。納得いくまで、何度でもお付き合いします。きょうだいの話し合いは、一度で決まらないこともあります。ただし、相続登記の期限だけは進んでいます。そこだけは押さえておいてください。

次に確かめること

まず、実家をどうしたいかを、ご自身の中でだけ決めてください。売りたいのか、誰かに住んでほしいのか、残したいのか。ここがはっきりしていると、話し合いで自分の考えを出せます。

そのうえで、登記事項証明書を取って、今の名義を確かめてください。すでに祖父母の名義のままということもあります。

💡 FP細井のワンポイント本音アドバイス

きょうだい全員が同じ情報を見ている状態を作るのが、話し合いの第一歩です。登記事項証明書と固定資産税の納税通知書、この2枚のコピーを全員に送るところから始めてみてください。

よくある質問

Q. 一人が住み続けたいと言っています。どうすればよいですか?

A. 代償分割を検討することになります。住み続ける方が実家を取得し、他の相続人に代償金を払う形です。問題になるのは、代償金を払える資力があるかどうかです。預貯金で払えない場合は、住宅ローンを組む、実家を担保に借りるといった方法を検討します。金融機関によって扱いが違いますので、早めに相談してください。なお、代償金の額を決めるには実家の評価額が必要です。査定を取って、全員で共有してください。

Q. 連絡が取れないきょうだいがいます。

A. 遺産分割協議は相続人全員で行う必要があるため、連絡が取れないままでは成立しません。まず戸籍の附票などで住所を調べる方法があります。それでも所在が分からない場合は、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てる、失踪宣告を求めるといった手続きがあります。いずれも専門家の領域ですので、弁護士・司法書士にご相談ください。なお、相続登記の期限については、相続人申告登記を単独で申し出ることで満たせます。

Q. 話し合いがまとまりません。

A. 期限を気にして焦る必要はありません。まず相続人申告登記で登記の義務を満たし、そのうえで落ち着いて話し合ってください。それでもまとまらない場合は、家庭裁判所の遺産分割調停という手続きがあります。調停は裁判ではなく、調停委員を交えた話し合いの場です。申し立てには弁護士に相談されることをおすすめします。当社では、司法書士・税理士をご紹介しています。

Q. 代償金が払えない場合はどうなりますか?

A. いくつか方法があります。①分割払いにする(協議書に明記する)、②金融機関から借りる、③実家を売って換価分割に切り替える、④一部だけ代償金を払い、残りは他の財産で調整する、などです。どれも相続人全員の合意が前提です。③に切り替える場合は、売れる見込みがあるかを先に確かめてください。無理に代償分割にこだわると、支払いが滞って後から揉める原因になります。

Q. 遺言があった場合はどうなりますか?

A. 遺言の内容が優先されます。ただし、遺言の形式に不備があると無効になることがありますし、相続人には遺留分という最低限の取り分が認められています。遺言があっても、相続人全員の合意があれば異なる分け方をすることも可能です。遺言の有効性や遺留分の計算は弁護士の領域ですので、内容に疑問がある場合はご相談ください。

まとめ|実家をどうするかを先に決めてから、分け方を選ぶ

  1. 共有名義は「今は楽、あとで詰む」。売るにも貸すにも全員の同意が要り、相続人が世代ごとに増えていく
  2. 分け方は4つ。現物分割・換価分割・代償分割・共有。共有だけは「決められないから選ぶ」ことが多い
  3. 話し合いは「実家をどうするか」から始める。お金の話から始めると評価額で揉める
  4. 相続登記は知った日から3年以内。遺産分割が成立したら、その日から3年以内にその内容で登記する
  5. まとまらないときは相続人申告登記で期限を満たせる。ただし売るには正式な相続登記が必要
  6. 「公平」と「同額」は違う。不動産を取る人は税・保険・管理・売却の手間も引き受ける
  7. 売って分けるなら、税金と費用を引いた手取りで分ける

※この記事の制度・数値は、下記の出典を 2026年10月9日 に確認したものです。制度は改正されることがありますので、実際の手続きの前に最新の公表をご確認ください。

きょうだいの話し合い、順番から一緒に整理します

「誰がいくら」の前に、「実家をどうするか」。この順番を変えるだけで、話し合いはずいぶん進みます。査定を取って全員で同じ数字を見る、手取りで分ける、経過を全員に知らせる。そういった進め方をお手伝いします。揉めてしまった後の手続きは弁護士の領域ですので、弁護士にご相談ください。焦って決める必要はありません。納得いくまで、何度でもお付き合いします。匿名でのご相談も承ります。

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