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地方の実家相続

相続した実家の売却と税金|取得費が不明なときの計算のしかた

2026年10月13日

「親が40年前に買った実家を売ることになった。でも、いくらで買ったのか分からない」
「契約書も通帳も残っていない。税金はどうなるのだろう」

相続した実家の売却で、取得費が不明なとき。40年前の購入では、資料が残っていないことがあります。そして、ここを知らずに進めると、課税の対象になる金額が大きく変わることがあります。

先に結論を申し上げます。取得費が分からない場合は、売った金額の5%を取得費として計算することが認められています。 一見ありがたい扱いに見えますが、裏を返せば残りの95%が利益とみなされるということです。

この記事では、譲渡所得の計算のしくみから、取得費の手がかりの探し方までを、国税庁の公表資料で確かめながら整理します。なお、3,000万円の特別控除そのものの使い方は売却時の税金|3,000万円控除の使い方にまとめていますので、この記事は取得費が分からない場合に絞ります。

細井誠

✍️ この記事を書いた人

FPマイスターホーム代表 細井 誠(宅地建物取引士・AFP)

相模原に暮らして40年以上、町田で不動産の仕事をして20年以上。これまで1,000件以上のご相談をお受けしてきました。「買える家」ではなく、「無理なく、幸せに暮らせる家」をご提案します。趣味はトライアスロン。お客様が納得されるまで、最後までお付き合いします。プロフィール

目次

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この記事でわかること

結論:相続した実家の売却で取得費が不明なら、売却価格の5%で計算する

まず、何が起きるかを数字で見てください。

国税庁の公表(令和8年4月1日現在法令等)によれば、売った土地建物の取得費が分からない場合には、売った金額の5%相当額を取得費とすることができるとされています。これを概算取得費といいます。

取得費が分かる場合と分からない場合(考え方を示すための例)

取得費が分かる場合 取得費が分からない場合
売却価格 2,000万円 2,000万円
取得費 1,500万円(当時の購入価格) 100万円(2,000万円の5%)
譲渡費用 100万円 100万円
譲渡所得 400万円 1,800万円

※上の表は仕組みを示すための例です。実際の税額は所有期間や特例の適用で変わります。

差は「課税される利益」に出ます

同じ2,000万円で売っても、取得費が分かるかどうかで、課税の対象になる金額が1,400万円も違います。

「分からないから5%」で済ませる前に、必ず探してください

概算取得費は、あくまで分からないときの救済措置です。契約書が1枚出てくるだけで、結果が大きく変わります。探す手間に見合う価値があります。

💡 FP細井のワンポイント本音アドバイス

「もう古い話だから」と思われるかもしれませんが、ここはあきらめずに探してください。あとで出てきても、申告を終えた後では手間が増えます。売ると決めた段階で、家の中を一度見てください。

譲渡所得の計算方法|売却価格から何を引けるか

税金の計算の土台です。

譲渡所得の計算式

譲渡所得 = 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)

この譲渡所得から、使える特例の控除額を引いた残りに税金がかかります。

まず、相続では親の取得費と取得日を引き継ぎます

「相続したのだから、自分の取得費は0円では」と思われるかもしれません。そうではありません。

相続で取得した不動産を売ったときは、亡くなった方(被相続人)が取得したときの取得費と取得日を引き継いで譲渡所得を計算します。だから、親がいくらで買ったのかを探す意味があるのです。

取得日も引き継ぎますので、親が長く持っていた実家であれば、所有期間は長期になります。譲渡所得の税率は所有期間(譲渡した年の1月1日時点で5年を超えるかどうか)で変わり、長期のほうが低い税率です。具体的な税率とご自身の税額は、税務署か税理士にご確認ください。

取得費とは

国税庁の公表(令和8年4月1日現在法令等)では、取得費に含まれるものとして次が挙げられています。

  • 土地・建物の購入代金、建築代金、購入手数料、設備費、改良費
  • 購入時に納めた登録免許税(登記費用を含む)、不動産取得税、印紙税
  • 借主を立ち退かせるために支払った立退料
  • 造成費用(埋立て、土盛り、地ならし)
  • 土地の取得に際して支払った測量費
  • 当初から土地利用が目的と認められる場合の、建物の購入代金や取壊し費用
  • 購入のための借入金の利子のうち、使用開始日までの期間に対応する部分

建物は、使った分だけ減ります

ここが見落とされやすい点です。国税庁の公表では、建物の取得費は、購入代金または建築代金などの合計額から、所有期間中の減価償却費相当額を差し引いた金額とされています。

築40年の家なら、建物部分の価値はかなり減っています。土地の取得費はそのまま使えますが、建物は目減りする、と覚えておいてください。

💡 FP細井のワンポイント本音アドバイス

建物は減価償却で目減りしますが、土地は減りません。古い実家では、土地の取得費が分かるかどうかが効きます。建物は減価償却で減りますが、土地は減りません。土地の購入価格が分かる資料を優先して探してください。

取得費が分からないときの概算取得費5%とは

あらためて整理します。

どういう扱いか

国税庁の公表によれば、取得費が分からない場合、売った金額の5%相当額を取得費とすることができるとされています。

さらに、実際の取得費が売った金額の5%相当額を下回る場合も、5%相当額を取得費とすることができるとされています。つまり、5%は下限として使える扱いです。

「分からない」とはどういう状態か

売買契約書や領収書などの資料がなく、実際にいくらで取得したかを示せない状態を指します。

記憶だけでは使えません

「たしか1,500万円くらいだった」という記憶では、取得費として認められません。資料で示せるかどうかが分かれ目です。

💡 FP細井のワンポイント本音アドバイス

5%という数字は、昔の地価が安かった時代の土地には厳しく働きます。40年前に300万円で買った土地が2,000万円で売れた場合、本来の取得費は300万円なのに、資料がなければ100万円として計算されます。資料があるかどうかで、課税される金額が変わるのです。

取得費が分からないときの調べ方|どこに何が残っているか

では、何を探せばよいのか。順番に挙げます。

取得費の手がかりになりうるもの

探すもの どこにあることが多いか
売買契約書・重要事項説明書 権利証と一緒に保管されていることが多い
領収書・振込の控え 契約書と同じ封筒、仏壇の引き出し、金庫
登記済権利証・登記識別情報 家の金庫、貸金庫、仏壇
住宅ローンの返済予定表・金銭消費貸借契約書 借入額から購入価格の見当がつくことがある
預金通帳(当時のもの) 支払いの記録が残っていることがある
購入当時のパンフレット・価格表 新築で購入した場合に残っていることがある
分譲時の資料・住宅メーカーの記録 建築会社に問い合わせると残っている場合がある

探す順番

  1. 権利証の保管場所をまず開ける — 契約書が一緒に入っていることが多いです
  2. 仏壇・金庫・貸金庫 — 大切な書類がまとまっていることがあります
  3. 当時の通帳 — 購入時期の前後の入出金を見ます
  4. 借入をしていた金融機関 — 古い記録が残っているか聞いてみる価値はあります
  5. 分譲業者・建築会社 — 会社が存続していれば、記録が残っている場合があります

片付けの前に探してください

遠方の実家では、残置物の処分を業者に一括で頼むことがあります。そのときに、権利証や契約書まで処分されてしまうことがあります。処分は取り消せません。 片付けの前に、書類だけは自分の目で確かめてください。遠方の実家の片付けについては遠方の実家を売る段取りにまとめています。

💡 FP細井のワンポイント本音アドバイス

見つかった資料が取得費として認められるかどうかの判断は、税務署か税理士の領域です。私たちができるのは「どこを探すか」までです。見つかったら、申告の前に必ず確認を取ってください。

譲渡費用の範囲|引けるもの・引けないもの

取得費と並んで、売却価格から引けるのが譲渡費用です。ここも国税庁の公表(令和8年4月1日現在法令等)で確かめます。

引けるもの

  • 売るために支払った仲介手数料
  • 売主が負担した印紙税
  • 貸家の借家人に明け渡してもらうための立退料
  • 土地を売るために建物を取り壊したときの取壊し費用と建物の損失額
  • より有利な条件で売るために既契約を解除して支払った違約金
  • 借地権を売るときに地主の承諾を得るために支払った名義書換料

引けないもの

譲渡費用にならないもの

  • 修繕費
  • 固定資産税
  • 売った代金を取り立てるための費用

譲渡費用は「売るために直接かかった費用」とされています。資産の維持や管理のための費用は、これに当たりません。

💡 FP細井のワンポイント本音アドバイス

空き家の管理費や草刈り代、帰省の交通費は、譲渡費用としては引けません。これらは家計上の負担として別に見ておく必要があります。空き家の維持費の考え方は遠方の空き家の管理と費用にまとめています。

相続した空き家の3000万円控除|使えるかどうかの確かめ方

取得費が小さくなっても、特例が使えれば負担を抑えられる場合があります。相続した実家でとくに関係するのが、被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例です。

国税庁の公表(令和8年4月1日現在法令等)による主な内容です。

空き家を売ったときの特例の要点(国税庁の公表による)

項目 内容
控除額 譲渡所得から最高3,000万円。令和6年1月1日以後の譲渡で取得した相続人が3人以上の場合は2,000万円まで
売却の期限 平成28年4月1日から令和9年12月31日までの売却であること
相続からの期限 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
建物の建築時期 昭和56年5月31日以前に建築されたこと
その他の主な要件 区分所有建物登記がされていない/相続開始の直前に被相続人以外の居住者がいなかった/相続時から譲渡時まで事業・貸付け・居住に使われていない/特別の関係がある人への売却でない
売却代金 1億円以下であること

耐震基準は「売るときに満たす」以外の道もあります

国税庁の公表では、譲渡の時に一定の耐震基準を満たすこと、または、譲渡の時からその譲渡の日の属する年の翌年2月15日までの間に、一定の耐震基準を満たすこととなったことが要件とされています。家屋を取り壊した場合も同様で、この取扱いは令和6年1月1日以後の譲渡が対象です。

昭和56年5月31日以前の家は、現状では耐震基準を満たさないものが多くあります。それだけで「使えない」と決めないでください。

また、被相続人が要介護認定等を受けて老人ホーム等に入所していた場合も、特定事由として一定の要件を満たせば対象になります(国税庁 No.3307)。

期限が2つあります

見落とされやすいのが、期限が2段構えになっていることです。

  1. 制度そのものの期限:令和9年12月31日まで
  2. 相続からの期限:相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで

どちらか早いほうが締め切りになります。

「空き家のまま置いておく」と、期限が過ぎます

相続してから何年も放っておくと、2番目の期限を過ぎて特例が使えなくなります。売ると決めているなら、期限から逆算して動いてください。

💡 FP細井のワンポイント本音アドバイス

3,000万円の特別控除には、マイホームを売ったときの特例と、ここで扱っている被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例の2つがあります。別の制度ですので、混同しないでください。マイホームを売ったときの特例は売却時の税金|3,000万円控除の使い方にまとめています。適用できるかどうかの判断は、税務署か税理士にご確認ください。

FPの視点|実家の売却の手取りを計算してから、売る時期を決める

FPの立場からお伝えしたいのは、順番です。

先に手取りを出す

売却価格ではなく、最後に手元に残る金額を先に出してください。

手取りを出す順番

1. いくらで売れそうか(査定)

2. 取得費は分かるか、分からないか(資料を探した結果)

3. 譲渡費用はいくらか(仲介手数料・印紙税・取壊し費用など)

4. 使える特例はあるか(空き家の特例の要件に当たるか)

5. 税金はいくらか(税務署か税理士に確認)

6. 手元に残るのはいくらか

この6番が分かって初めて、売るかどうか、いつ売るかを決められます。

きょうだいで分けるなら、手取りで分ける

売却代金をきょうだいで分ける場合、税金を引いた後の金額で考えてください。売却価格で割って約束してしまうと、税金を払った後で足りなくなります。分け方はきょうだいで実家を相続したらにまとめています。

💡 FP細井のワンポイント本音アドバイス

取得費が分からない物件では、思っていたより税負担が大きくなることがあります。それが分かったうえで売るのと、売った後に知るのとでは、納得感がまったく違います。先に数字を出すことをおすすめします。

向かない人・よくある失敗|相続した不動産の売却の税金の注意点

この記事の範囲を超える方

こういう場合は、先に専門家へ

  • 資料が見つかり、取得費として使えるか判断したい → 税務署か税理士へ
  • 相続税を払った → 相続税額の一部を取得費に加算できる特例があります。相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までの譲渡が対象です(国税庁 No.3267)。税理士にご確認ください
  • 事業や賃貸に使っていた家 → 計算の扱いが変わります
  • 名義が亡くなった方のまま → 売る前に相続登記が必要です

よくある失敗

  1. 片付けのときに契約書を捨ててしまった → 処分は取り消せません。書類だけは先に確かめてください
  2. 売却価格で分け方を約束した → 税金を引いた手取りで決めてください
  3. 空き家のまま3年を過ぎた → 空き家の特例が使えなくなります
  4. 資料を探す前に「5%でいい」と決めた → 資料1枚で結果が変わります

急がなくて大丈夫です

焦って決める必要はありません。納得いくまで、何度でもお付き合いします。ただし、特例の期限だけは待ってくれません。そこだけは先に確かめてください。

次に確かめること

まず、権利証の保管場所を開けて、売買契約書が一緒に入っていないかを見てください。契約書は、権利証と同じ封筒に保管されていることがあります。

そのうえで、相続が開始した日(親御さんが亡くなった日)を確かめてください。空き家の特例の期限は、そこから数えます。

💡 FP細井のワンポイント本音アドバイス

相続開始の日は、戸籍(除籍)で確かめられます。「3年を経過する日の属する年の12月31日」という数え方なので、思っているより期限が近いこともあれば、まだ余裕があることもあります。カレンダーに書いておくと安心です。

よくある質問

Q. 通帳も契約書も残っていません。本当に5%しか引けませんか?

A. 資料で取得費を示せない場合は、国税庁の公表のとおり、売った金額の5%相当額を取得費とする扱いになります。ただし、あきらめる前に探していただきたい場所があります。権利証と一緒に保管された売買契約書、当時の通帳、住宅ローンの金銭消費貸借契約書、分譲時のパンフレット、建築会社に残る記録などです。借入をしていた金融機関に古い記録が残っていることもあります。見つかった資料が使えるかどうかの判断は、税務署か税理士にご確認ください。

Q. 相続税を払った場合、何か引けるものはありますか?

A. 相続財産を一定の期間内に譲渡した場合、支払った相続税額のうち一定の金額を取得費に加算できる特例があります。要件と計算方法は国税庁が公表していますので、相続税を納めた方は必ず確認してください。適用できるかどうか、いくら加算できるかは個別の事情で変わりますので、税理士にご相談ください。当社では、必要に応じて税理士をご紹介しています。

Q. 空き家の特例は使えますか?

A. 主な要件は、家屋が昭和56年5月31日以前に建築されたこと、区分所有建物登記がされていないこと、相続開始の直前に被相続人以外の居住者がいなかったこと、相続時から譲渡時まで事業・貸付け・居住に使われていないこと、譲渡時に一定の耐震基準を満たすこと、売却代金が1億円以下であることなどです。期限は、平成28年4月1日から令和9年12月31日までの売却で、かつ相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで。控除額は最高3,000万円ですが、令和6年1月1日以後の譲渡で取得した相続人が3人以上の場合は2,000万円までです(いずれも国税庁の公表、令和8年4月1日現在法令等)。

Q. 確定申告はいつすればよいですか?

A. 不動産を売って譲渡所得が生じた場合、売った年の翌年に確定申告をします。特例を使う場合は、申告が要件になっているものもあります。「税金がかからないから申告しなくてよい」とは限りませんので、売却した年のうちに、申告が必要かどうかを税務署か税理士に確認しておいてください。

Q. 税理士に頼むべきでしょうか?

A. 取得費が分からない、特例を使いたい、相続税を払っている、共有で売る。このいずれかに当てはまる場合は、税理士にご相談いただくほうが安心です。計算の前提が一つ変わるだけで税額が大きく動くためです。当社では、必要に応じて税理士をご紹介しています。なお、私たち不動産会社が税額の計算や申告を代理することはできませんので、そこは正直に申し上げます。

まとめ|資料を探してから、手取りを出して、売る時期を決める

  1. 取得費が分からない場合は、売った金額の5%を取得費とする扱いになる(国税庁の公表、令和8年4月1日現在法令等)
  2. 5%で計算すると、残りの95%が利益とみなされる。資料が1枚出るだけで課税される金額が大きく変わる
  3. 取得費の手がかりは、権利証と一緒の売買契約書、当時の通帳、金銭消費貸借契約書など。片付けの前に探す
  4. 建物の取得費は減価償却で目減りする。土地の購入価格が分かる資料を優先して探す
  5. 譲渡費用として引けるのは「売るために直接かかった費用」。修繕費・固定資産税は引けない
  6. 相続した空き家の特例は、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、かつ令和9年12月31日までの売却が期限

※この記事の制度・数値は、下記の出典を 2026年10月9日 に確認したものです。制度は改正されることがありますので、実際の手続きの前に最新の公表をご確認ください。

売る前に、手元にいくら残るかを一緒に出しませんか

査定から、取得費の手がかりの探し方、売却にかかる実費の見積もり、特例の期限の確認まで、順番に整理します。当社が出せるのは、売却価格の見通しと、売るためにかかる実費までです。税額の計算と、特例が使えるかどうかの判断は税理士の領域ですので、税理士をご紹介します。焦って決める必要はありません。納得いくまで、何度でもお付き合いします。匿名でのご相談も承ります。

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