自営業の方にとって、経費をきちんと計上し、青色申告特別控除(帳簿を付けて青色申告をする人が、所得から差し引ける控除)などを使って所得税・住民税を抑えるのは、正しい節税です。ただ、住宅ローンの審査では「所得が小さい=返済に回せるお金が少ない」と読まれます。節税すればするほど、借入可能額は小さくなりやすいのが、自営業の住宅ローンの難しいところです。
「審査で見られる所得」に影響するもの・しないもの
FPの視点で整理すると、節税の方法によって、審査への影響の出方が違います。
- 経費を増やす節税:事業所得そのものが小さくなるため、審査で見られる所得も小さくなります
- 青色申告特別控除(国税庁 No.2072:55万円、一定の要件を満たすと65万円、または10万円。令和8年4月1日現在法令等):所得金額から差し引かれるため、申告書上の所得は小さくなります
- 所得控除(所得から差し引いて税額を計算する控除。小規模企業共済やiDeCo〈個人型確定拠出年金〉の掛金は「小規模企業共済等掛金控除」という所得控除。国税庁 No.1135、令和8年4月1日現在法令等):税額は下がりますが、フラット35が年収とする「所得金額(事業所得などの合計)」は、所得控除を引く前の金額です
つまり、同じ「税金を抑える工夫」でも、住宅ローンへの影響には差があります。ただし、銀行がどの数字を見るかは金融機関によって異なるため、事前審査の前に確かめてください。
住宅ローン控除とのつながりも見ておく
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、年末のローン残高をもとに計算した金額を、所得税額から差し引く仕組みです(国税庁 No.1211-1、令和8年4月1日現在法令等)。所得を大きく抑えていると、もともとの所得税が少なく、控除できる額を所得税だけでは引ききれないことがあります。引ききれなかった分は翌年度の個人住民税から差し引かれますが、上限は「前年分の所得税の課税総所得金額等の5%(97,500円まで)」です(総務省、令和12年12月31日までに居住した場合、2026年9月時点)。この上限も所得をもとに決まるため、所得が小さいと、控除の一部が使われずに残ることがあります。控除額の目安は「住宅ローン控除はいくら戻る?年収別シミュレーション」も参考にしてください。逆に、経費の計上を控えて所得が増えれば、その分、税金と国民健康保険料の負担も増えます。
どちらが得かは、ご家族の人数、事業の見通し、借りたい額によって変わります。「審査のために所得を増やす」前に、税金・社会保険料・借入可能額・控除の4つを並べて、手元に残るお金で比べることが大切です。
所得を実際より大きく見せることはしないでください
住宅ローンのために、申告の中身を実態と違う形にすることは、してはいけません。借りられたとしても、実際の所得に対して返済が重くなり、暮らしが苦しくなります。修正申告(提出済みの申告の内容を正しく直す手続き)をする場合も、税理士など専門家に相談し、事実にもとづいて行ってください。
💡 FP細井のワンポイント本音アドバイス
経費の多い少ないを「審査のため」だけで決めるのはおすすめできません。住宅ローンの返済は長期にわたることが多いものです。税金、国民健康保険料、住宅ローン控除、毎月の返済まで含めて、「手元にいくら残るか」で比べてから決めてください。